あるとき、偉大で、気高く、人の良い、童話によく書かれている性格すべてを備えた魔術師がおりました。しかし、その魔術師はあまりにも人が良く、それを誰と分かち合ったらよいか分かりませんでした。彼には愛情を注げる人も、一緒に遊べる人も、時間を一緒に過ごす人も、思いを捧げる人もいませんでした。彼は誰かに必要とされたくもありました。一人ぼっちでいるのはとても悲しいことだからです。

 

魔術師はどうしたらよいのでしょうか。魔術師は石を作ろうと思いました。小さいけれどきれいな石を。おそらくそれが答えなのだろうと思いました。「私は石を撫でて、傍にいつも何かがあることを感じていよう。私も石も幸せに暮らせるだろう。だって、一人ぼっちでいるのはとても悲しいことだから。」

 

魔術師が杖を振ると、すぐさま欲しいと思っていた通りの石が現われました。魔術師は石を撫ぜ、抱きしめ、話しかけましたが、石はまったく反応しませんでした。それは冷たいままで、お返しに何かしてくれることはありませんでした。魔術師が石に何をしてやっても、石は相変わらず、無感情の物質のままでした。魔術師はまったく満足しませんでした。どうして石は反応できないのだろう。そこで彼はさらに石を作り、そして、岩、丘、山、土地、地球、月、そして銀河の創造を試みました。しかし、結果はすべて同じでした。何の反応もありませんでした。彼は悲しく、一人ぼっちでした。

 

魔術師は悲しくて石の代わりに植物を作ろうと思いました。美しい花を咲かせる植物です。植物に水をやり、空気や日光を与え、音楽を聴かせてやろう。これなら、植物は幸せだろう。そうすれば魔術師も植物も満足するだろう。だって、一人ぼっちでいるのは悲しいことだから。

 

魔術師が杖を振ると、すぐさま欲しいと思っていた通りの植物が現われました。魔術師は有頂天で植物の周りで踊りを始めました。でも、植物は微動だにしませんでした。魔術師と一緒に踊ろうとも、動きについてこようともしませんでした。植物は魔術師がしてやる最低限の世話にしか反応しませんでした。水をやると成長し、水をやらないと枯れてしまいました。愛情のすべてを注ぎたい、とても人の良い魔術師にとって、植物は十分なものではありませんでした。魔術師には他にももっとしてやりたいことがありました。だって、一人ぼっちでいることはとても悲しいことだから。そこで魔術師はあらゆる種類の植物を、あらゆる広さで作りました。畑、森林、果樹園、プランテーション、そして小さい森。しかし、どれも最初の植物と同じようにしか反応しませんでした。そして、また魔術師は一人ぼっちで、悲しくしていました。

 

魔術師は考えあぐねました。どうしたらよいのだろう。そうだ、動物をつくろう! どんな動物がいいだろうか。犬はどうだろう。そうだ、いつも一緒にいてくれるかわいい小犬がいいだろう。魔術師が犬を散歩に連れていくと、犬は飛んだり、跳ねたり、踊ったりしながら一緒に走ってくれるだろう。魔術師が宮殿(というよりは魔術師ですからお城)に帰ってくると、犬はとても喜んで、飛び付くように出迎えてくれるだろう。魔術師も犬も幸せなことだろう。だって一人ぼっちでいるのはとても悲しいことだから。

 

魔術師が杖を振ると、すぐさま欲しいと思っていた通りの犬が現われました。魔術師は犬の世話をし、えさをやり、水を与え、やさしく撫でてやりました。また、一緒に走り、洗ってやり、散歩にも連れて行きました。しかし、犬の愛情はどこにいても飼い主のものにはかなわわないことが分かりました。魔術師は犬と上手に遊んでやっても、魔術師が行く所にはどこにでも連れてやっても、犬が何も返してくれられないことを悲しく思いました。犬は魔術師がしてやったことを感謝できず、魔術師が何を考え望んでいるのか、何を求めているのか、どれだけ犬のために苦労しているかも理解できないので、魔術師の本当の友人にはなれませんでした。しかし、これは魔術師が望んだことです。魔術師は他の動物も作りました。魚、鳥、哺乳類。でもすべて無駄でした。どの動物も彼を理解することはできませんでした。こんなに一人ぼっちでいるのはとても悲しいことでした。

 

魔術師は座り込んで考えました。そして、本当の友人は、魔術師を探し求め、心底必要としてくれ、魔術師のような人で、魔術師と同じ位愛し、理解してくれる、魔術師に似ているパートナーでなければならないことに気づきました。

 

パートナー?本当の友人?それなら、その人は魔術師の傍にいて、魔術師が与えるものを理解し、感謝し、その代わりにすべてを与えてくれる人でなければなりません。魔術師は愛し、愛されたくもあったのです。これなら、魔術師もその人も幸せだろう。だって、一人ぼっちでいるのはとても悲しいことだから。

 

そうして魔術師は人を創造することを考えました。人なら本当の友人になってくれられる!人なら魔術師のような人になれる、ただ助けが必要なだけだ。これなら二人とも幸せに暮らせるだろう。だって一人ぼっちでいるのはとても悲しいことだから。しかし、二人が幸せに暮らすには、人にまず魔術師なしで、一人ぼっちで悲しい経験をしてもらわなければなりません。

 

魔術師は再度杖を振って、遠くに人を作りました。人は周りの石、植物、丘、畑、月、雨、風、そして美しいもので満ち溢れコンピュータやフットボールまであるこの世界で幸せで、何の不自由も感じなかったため、この世界すべてを作った魔術師がいることを感じることはできませんでした。一方、魔術師はあいかわらず悲しく、一人ぼっちでした。しかし人は彼を創造し、愛し、待ち望み、「一人ぼっちでいるのはとても悲しいことだから、二人一緒なら幸せに暮らせる」と言った魔術師がいることを知りませんでした。

 

人はコンピュータやフットボールに至るまであらゆるものを与えられて満足し、魔術師の存在に気づきませんでした。そんな人がどうして魔術師を探し出し、知り合い、仲良くなり、愛し、友人になり、「君なしで一人ぼっちでいるのはとても悲しいことだから、二人一緒に幸せに暮らそう」と魔術師に言ってあげることができたでしょうか。

 

人は近くにあるものしか知らず、周りの人達に従って行動し、周りと同じことを話し、周りが欲するものを欲しがり、人の感情を害することなく、コンピュータやフットボールのプレゼントを上手に要求していました。一人ぼっちの悲しい魔術師がいることをどうして知ることができたでしょうか。

 

しかし、魔術師は人が良く、いつも人を探し求めていました。時が熟した時、魔術師は杖を振って、人の心に静かに静かに呼びかけました。人は自分が何かを探し求めていることに気づきましたが、「君なしで一人ぼっちでいるのはとても悲しいことだから、二人一緒に幸せに暮らそう」と呼びかけているのが魔術師であることには気づきません。

 

魔術師がもう一度杖を振ると、人は魔術師を感じました。そして人は魔術師のことを心に描き、「魔術師なしで、一人ぼっちでいるのはとても悲しいことだから二人一緒に暮らすと幸せだろうなあ」と考えるようになりました。魔術師がさらにもう一度杖を振ると、人は友愛に溢れた魔法の塔があること、その中で魔術師が彼を待っていて、そこでしか二人は幸せに暮らせないだろうということを感じました。だって、一人ぼっちでいるのはとても悲しいことだから・・・。

 

しかし、その塔は何処にあるのだろう。どうしたら到達できるのだろう。どの道を行けばよいのだろう。人は途方に暮れ、混乱して自分に問いかけました。どうしたら魔術師に会えるのだろう。彼は杖の振りを心に感じ続け、眠れません。彼は魔術師と巨大な塔が心に焼き付いて、食べることもできません。これは非常に欲しているものが見つけられず、一人ぼっちで悲しい時に起こることです。

 

しかし、人が魔術師のように、賢明で、偉大で、気高く、人の良い、愛情の深い友人になるためには、杖の一振りでは十分ではありませんでした。人は自分で奇跡を起こすことを学ばねばなりませんでした。

 

そこで、魔術師は、ひそかに、巧みに、やさしく、人を傷つけないように、人を最も偉大な最古の魔法の書「ゾハールの書」に導き、巨大な塔への行き方を教えました。人はすぐにでも魔術師、友人に合い、「一人ぼっちでいるのはとても悲しいことだから二人一緒に幸せに暮らそう」と伝えたい一心で「ゾハールの書」を学びました。

 

しかし、塔の周りには高い壁があり、多くの見張りが彼を追い払い、魔術師と二人一緒に幸せに暮らすのを妨害します。人は絶望し、魔術師は鍵のかかった門の奥にある塔に隠れてしまいました。壁は高く、見張りは堅く、何者も通しません。どうなるのでしょうか。一人ぼっちでいるのは悲しいけれど、どうしたら二人一緒に幸せに暮らせるのでしょうか。

 

最も絶望して目覚めた時、人はいつも突然杖の振りを感じました。人はそれに励まされて、もう一度壁に挑戦し、なんとしても見張りを跳ね除けのけようと試みました。門を破り、塔に到達し、梯子の横木を登り、魔術師に会いたい。

 

しかし、人が前進し、塔と魔術師に近づけば近づくほど、見張りもさらに用心深く、さらに強く、さらに手堅くなり、手加減なく彼をおびえさせます。

 

しかし、人はその度に勇敢に、たくましく、賢くなっていきます。人はあらゆる技を自分で学び、魔術師にしか発明できないものを発明します。押し戻される度に人は魔術師をさらに欲するようになり、魔術師の愛をさらに深く感じ、魔術師と二人一緒に暮らすことをこの世の何よりも望むようになり、魔術師の顔を見たくなります。この世界でありとあらゆるものを与えられていても、魔術師なしでは寂しく、魔術師と二人一緒にいることが一番の幸せだから。

 

そうして、魔術師なしではもう耐えられなくなった時、塔の門が開き、魔術師、彼の魔術師が人の前に駆けてきて言いました。「一人ぼっちでいるのはとても悲しいことだから、二人一緒に幸せに暮らそう。」

 

それから二人は信用し合い、分かり合える友人になり、二人の間にはそれ以上のすばらしい喜びは永遠に無限にありませんでした。二人は一緒にいるととても幸せで、一人ぼっちでいることがどれほど悲しいことだったかを思い出すことは一時もありませんでした。

 

人が幸せになれる唯一の方法は魔術師を知ることであり、それこそが最も大切なことであり、魔術師なしではとても悲しいだろうと思われた方は私達ブネイバルーフにご連絡ください。

 

Last Updated (Sunday, 29 November 2009 14:49)